「派遣だから、社会保険は関係ない」と思っていませんか?あるいは、「入りたいけれど条件がよくわからない」と感じている方もいらっしゃるかもしれません。実は、派遣スタッフも一定の条件を満たせば、正社員と同じように健康保険や厚生年金保険などの社会保険に加入することができます。
この記事では、「派遣スタッフでも社会保険に加入できるのか」という疑問に対して、健康保険法・厚生年金保険法・労働者派遣法などの法令に基づきながら、加入条件や手続きの流れを分かりやすく整理します。加入することのメリットや、最新の法改正情報についても触れていきますので、ぜひ最後までご覧ください。
そもそも「社会保険」とは何か
「社会保険」という言葉は、実はいくつかの保険制度の総称です。一般的に「社会保険」と呼ばれる場合、以下の5種類の保険を指します。

- 健康保険(病気やけがをしたときの医療費を一部補助)
- 厚生年金保険(老後・障害・死亡時に年金が給付される)
- 介護保険(40歳以上が加入。介護が必要になったときのサービスを支える)
- 雇用保険(失業したときや育休・産休中の給付が受けられる)
- 労働者災害補償保険(労災保険。仕事中のけがや病気に対して給付)
このうち①〜③を「狭義の社会保険」、④〜⑤を「労働保険」と分類することもありますが、本記事では①〜⑤を含めた広い意味で「社会保険」とします。
派遣スタッフの場合、社会保険の手続きはすべて雇用主である派遣会社(派遣元)が担います。派遣先の企業ではなく、あくまでも派遣元との雇用契約に基づいて加入が決まる点がポイントです。
派遣スタッフが社会保険に加入できる条件とは
基本の加入条件(4分の3基準)
健康保険・厚生年金保険への加入条件は、雇用形態に関わらず同一です。派遣スタッフが加入できる基本の条件は、以下のとおりです。
・ 週の所定労働時間が、同じ事業所のフルタイム労働者の4分の3以上であること
・月の所定労働日数が、同じ事業所のフルタイム労働者の4分の3以上であること
たとえば、フルタイムが週40時間の場合、週30時間以上勤務すれば加入対象となります。
この基準は、健康保険法・厚生年金保険法に定められた「強制適用」の要件に基づいています。
健康保険法第3条の趣旨に基づけば、適用事業所で雇用される人は、原則として健康保険の被保険者になるとされています(※同条には例外なども含まれる複雑な構成になっているため、ここでは趣旨のみをご紹介しています。詳細な条文については厚生労働省ウェブサイトをご確認ください)。
短時間労働者への適用拡大(週20時間基準)
週の所定労働時間がフルタイムの4分の3未満であっても、以下のすべての条件を満たす場合は、社会保険に加入することができます。これを「短時間労働者への適用拡大」といいます。
- 週の所定労働時間が20時間以上であること
- 雇用期間が2か月を超える、または2か月を超えることが見込まれること
- 学生でないこと(夜間・定時制・休学中は除く)
- 勤務先(派遣会社)の規模が一定以上であること
2022年10月には「従業員101人以上の企業」まで、2024年10月には「従業員51人以上の企業」まで段階的に適用が拡大されました。なお、2026年6月時点では、月収88,000円以上という賃金要件もあわせて設けられています。
最新情報:2026年以降の法改正について
2025年6月13日、「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律」(令和7年法律第74号、いわゆる年金制度改正法)が成立し、今後、社会保険の適用拡大がさらに進む見通しです。主な改正内容は以下のとおりです。
- 月収88,000円以上という賃金要件(いわゆる「106万円の壁」)の撤廃
- 企業規模要件の撤廃:法律上は「令和9年(2027年)10月1日から令和17年(2035年)10月1日までの間に段階的に撤廃する」と定められています。報道では、2027年10月に被保険者数が36人以上、2029年10月に21人以上、2032年10月に11人以上、2035年10月に10人未満規模という4段階のスケジュールで企業規模要件の撤廃を行うと説明されています。
- あわせて、2029年10月からは、常時5人以上を雇用する個人事業所についても、業種にかかわらず原則として社会保険の強制適用対象となる予定です(現行は法定17業種のみが対象。既存事業所には当分の間、経過措置が設けられます)。
この改正により、賃金要件の撤廃が見込みどおり実現すれば、週20時間以上勤務しており2か月超の雇用が見込まれる派遣スタッフは、収入額にかかわらず社会保険に加入できるようになります。企業規模要件についても2035年10月には企業規模にかかわらず加入できるようになる予定です。なお、改正に伴う事業主の負担を支援するため、労使折半を超えて事業主が任意で多く負担した場合に、その分を制度的に支援する措置が法律に盛り込まれています。
※最新の施行状況は厚生労働省「社会保険適用拡大特設サイト」「年収の壁への対応」のページでご確認ください。
雇用保険・労災保険の加入条件
雇用保険については、以下の条件で加入対象となります。
- 週の所定労働時間が20時間以上であること
- 雇用期間が31日以上見込まれること
なお、労災保険(労働者災害補償保険)については、派遣スタッフも全面適用されており、保険料は全額派遣会社負担です。すべての派遣スタッフが、業務上のけがや病気に備えることができます。
社会保険の手続きは誰がするのか
社会保険の加入手続きを行うのは、派遣スタッフを雇用する「派遣元(派遣会社)」です。派遣先企業ではなく、あくまでも派遣会社が責任を持って手続きを行う義務があります。
これは、労働者派遣法に基づくものです。社会保険の加入手続きを行うのは、派遣スタッフを雇用する「派遣元(派遣会社)」です。派遣先企業ではなく、あくまでも派遣会社が責任を持って手続きを行う義務があります。これは、労働者派遣法に基づくものです。
派遣元事業主は、労働者派遣をするときは、あらかじめ、(中略)健康保険、厚生年金保険及び雇用保険の被保険者資格の取得に係る事項を派遣先に通知しなければならない。
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(労働者派遣法)第35条
この規定により、派遣会社は加入状況を派遣先にも通知しなければならず、社会保険への加入・未加入の理由について、透明性を保つことが求められています。
また、条件を満たしているにもかかわらず社会保険への加入手続きがなされていない場合は、派遣会社に確認・申し出ることが大切です。「正しく加入できているか確認したい方は、まず担当の派遣会社に問い合わせてみてください。
社会保険に加入するメリット
「保険料が引かれて手取りが減る」と感じる方もいるかもしれません。ただ、社会保険への加入には多くのメリットがあります。
傷病手当金・出産手当金が受けられる
業務外で起きた病気やけがで働けない期間に、給与の約3分の2が最長1年6か月間支給される「傷病手当金」は、健康保険(社会保険)の加入者のみが対象です。国民健康保険にはこの制度がありません。出産で休業する場合も、出産手当金として同様の給付を受けることができます。
将来の年金額が増える
厚生年金保険に加入することで、老後に受け取れる年金額が国民年金(基礎年金)に上乗せされます。加入期間が長くなるほど、将来受け取れる年金額も増える仕組みです。
保険料を会社と折半できる
社会保険の保険料は、派遣会社(事業主)と派遣スタッフが折半して負担します。たとえば、厚生年金保険料率は18.3%ですが、スタッフが負担するのは半額の9.15%です。国民年金・国民健康保険をすべて自分で支払う場合と比べると、実質的な負担が軽くなるケースも多くあります。
社会保険に「加入しなくてよい」は通用しない
「社会保険に入りたくない」という方もいらっしゃるかもしれません。しかし、加入条件を満たしている場合、社会保険への加入は「義務」であり、スタッフ本人の希望で拒否することはできません。これは正社員・派遣スタッフにかかわらず、適用されるルールです。
扶養の範囲内で働くことを希望する場合は、労働時間・収入のラインを加入条件以下に抑えて契約する方法があります。ただし、扶養範囲の判断は配偶者の加入する健康保険組合の基準によっても異なりますので、事前に確認することをお勧めします。
まとめ:派遣スタッフも条件を満たせば社会保険に加入できる
派遣スタッフも、一定の条件(労働時間・雇用期間など)を満たせば、正社員と同様に社会保険に加入することができます。手続きは派遣会社(派遣元)が行う義務を負っており、条件を満たしているにもかかわらず未加入の場合は、派遣会社や労働局に相談しましょう。
2025年6月には年金制度改正法も成立し、今後施行予定となります。
社会保険への加入は、働く皆さんの生活を守るための大切なセーフティネットです。「自分は対象になるのだろうか」と感じたら、まずは派遣会社の担当者に確認してみてください。あなたの権利は、きちんと法律に守られています。一人で抱え込まず、遠慮なく相談してみましょう。
- 派遣スタッフでも社会保険に加入できますか?
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はい。派遣スタッフも、労働時間や雇用期間などの条件を満たすと、健康保険や厚生年金保険に加入します。雇用形態が派遣だからという理由で、社会保険の対象外になるわけではありません。
- 派遣スタッフの社会保険は、派遣先と派遣会社のどちらが手続きしますか?
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社会保険の加入手続きを行うのは、雇用主である派遣会社(派遣元)です。実際に勤務する派遣先企業ではありません。加入状況を確認したい場合も、まずは派遣会社の担当者へ問い合わせましょう。
- 短時間勤務でも社会保険に加入することはありますか?
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はい。フルタイム労働者の4分の3未満の勤務であっても、週の所定労働時間が20時間以上であることや、2か月を超える雇用が見込まれることなど、一定の条件を満たすと加入対象になります。
- 社会保険の加入条件を満たしていても、加入を断ることはできますか?
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いいえ。加入条件を満たしている場合、社会保険への加入は義務となるため、本人の希望で断ることはできません。扶養の範囲内で働きたい場合は、契約前に労働時間や収入について派遣会社へ相談することが大切です。
- 加入条件を満たしているのに、社会保険に加入できていない場合はどうすればよいですか?
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まずは派遣会社の担当者に、加入状況や未加入の理由を確認しましょう。確認しても適切に対応してもらえない場合は、年金事務所や都道府県労働局などの窓口に相談する方法があります。

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